睡眠は健康を左右する?快適な生活にするための良質な睡眠方法を解説
日本人は世界において睡眠時間が短いということをご存じでしょうか。
慢性的な睡眠不足は精神的なストレスを感じやすくなるほかに、生活習慣病を引き起こすリスクが高まります。
最近は「睡眠の質を向上させる」という言葉をよく聞くようになり、健康のために睡眠時間を確保しようと意識する人が増えてきました。しかし基本的な生活習慣を整えなければ、良い睡眠を確保することはできません。
この記事では睡眠不足が引き起こす影響と、解消するための生活習慣のポイントをわかりやすく解説します。
健康と睡眠の密接な因果関係
睡眠不足が続くと頭がボーッとして注意力が散漫になり、仕事や動作のパフォーマンスが落ちてしまいます。これが1〜2日程度なら何とか乗り越えられるかもしれません。しかし数か月続くと健康にも影響を及ぼします。睡眠不足が長く続くと注意力が散漫になるだけではなく、記憶力や活力も低下していきます。さらに不安やイライラした感情や疲労感、自信喪失などの症状も出てきて大きなストレスになることもあるのです。
さらに休息による細胞ダメージのリカバリーがうまくいかなくなり、生活習慣病を始めとしたさまざまな疾患の発症リスクを高める一因にもつながります。
睡眠不足と生活習慣病の関係
睡眠不足は体内のホルモン分泌や自律神経機能にも影響を及ぼします。睡眠不足で減少するのが、食欲を抑えるホルモンの「レプチン」。反対に増えるのが、食欲を高めるホルモンの「グレリン」です。この現象はごくわずかな寝不足であっても起こります。不眠症状のある人は良眠の人に比べて糖尿病のリスクが1.5〜2倍に。さらに睡眠不足は甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンの分泌にも影響を及ぼし、高血圧になります。
睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病
「睡眠時無呼吸症候群」も生活習慣病と密接な関係があります。睡眠時無呼吸症候群は肥満や顎が小さいことによる気道閉塞、気道への舌の落ち込み(舌根沈下)、扁桃肥大などが原因で睡眠中に何度も息が止まってしまう病気です。
睡眠中に息が止まって低酸素状態になるので、全身の酸素状態をフォローするのに血圧をあげて体内の酸素循環を促します。結果として高血圧の一因になるのです。さらに日中は眠気によりストレスが増大します。その影響で交感神経の優位な状態が続き、眠りにつきにくくなり、睡眠の質が低下する悪循環に。その結果、生活習慣病を引き起こすリスクも高くなるのです。
睡眠不足は精神的な不調も及ぼす
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。人はときに夢を見ますが、夢を見るのはレム睡眠です。夢は現実で体験した要素が現れており、記憶の整理や定着、感情の適正化がなされ、怒りや悲しみの感情を沈静化するといわれています。睡眠不足になると短縮されてしまうのがレム睡眠です。レム睡眠が短くなると、本来なされるはずの記憶や感情の調整ができず、認知力や判断力などの認知機能が低下します。感情面の整理がうまくいかなくなると、時には精神的に不安感が増して気持ちが不安定になることも。実際に不眠はうつ病発症のリスクの要因となる研究結果もあり、注目を浴びています。
睡眠の質と量の実態とは?
睡眠不足は心身にさまざまな影響を及ぼします。過去には「7〜8時間以上眠りなさい」「質よりも量」ということが重視されてきましたが、近年は「量よりも質が大切」といわれています。では「質の良い睡眠」とはどのような睡眠なのかを解説します。同じ時間に起きて生活リズムを乱さない
「質のいい睡眠」のためには、毎日同じ生活リズムで過ごすことが大切です。夜寝る時間の調整は、仕事やお付き合いにより毎日同じくするのは難しいこともあると思います。しかし起床時間は意識できるはず。休みの日でも朝寝坊せず、毎日同じ時間に起きるようにしましょう。起きる時間を定時に保つことで、体内時計のリズムが整い生活リズムも乱れません。そして夜寝る時間に睡眠をサポートするホルモンが分泌され、速やかな入眠に誘われるでしょう。しっかりと熟睡できて心身ともにリフレッシュできる
速やかに入眠が得られれば、その後はレム睡眠とノンレム睡眠がくり返され、睡眠中の各種ホルモンが分泌されます。特に成長ホルモンは大切で、毎日のストレスなどにより傷ついた細胞のダメージをリカバリーしてくれる役割があります。質の良い睡眠をとることは、体のダメージを回復し、健康に導くサポートをしてくれるのです。さらにレム睡眠で夢を見ることで気持ちや思考の整理もしやすくなります。
熟睡が得られれば、疲労感もなくなり心もリフレッシュし精神的な安定ももたらします。日中の活動も精力的にできる一助になるでしょう。
- 熟睡感は得られているか
- 疲労感は軽減しているか
- 日中は精力的に活動できているか
睡眠と健康に関する研究論文を解説
睡眠不足と健康障害について、さまざまな研究がされています。日本心身健康科学会による論文を紹介します。睡眠不足が続くと糖尿病になる⁉
睡眠不足が続くとグレリンとレプチンの分泌に影響を及ぼします。4日間連続して睡眠時間を4時間に制限するだけで、空腹感と食欲が1日中増加。さらに睡眠不足のときは、上昇した血糖値を正常に下げる能力も低下します。過食と高血糖の持続により、糖尿病の要因になるといわれています。睡眠不足と高血圧の関係
睡眠不足の人は、十分な睡眠がとれた人より血圧や心拍数も上昇しています。入眠困難な人はそうでない人に比べて高血圧発症率が2倍。中途覚醒の人は1.9倍に上昇。睡眠障害は年齢やアルコール摂取量、喫煙などとならんで高血圧発症のリスク因子といえるでしょう。睡眠不足はうつ病の一因?
うつ病の症状のひとつが睡眠障害。しかし米国の大学で、学生時代に睡眠障害があった人は卒業後のうつ病に罹患したという研究結果があります。また不眠を訴えた人のうつ病発症率はそうでない人の40倍。不眠症状のうち、うつ病との関連としてよく知られているのが中途覚醒や早朝覚醒。この論文では睡眠パターンとして入眠困難が最もうつ病に関連していることを明らかにしています。つまり睡眠不足はうつ病につながる一因と考えられているのです。参考:日本心身健康科学会
良質な睡眠のために意識したいこと
質の良い睡眠をとるために気を付けたい最低限の生活のポイントは- 規則正しい生活を送る
- 寝る前の過ごし方を意識する
規則正しい生活を送る
毎日同じ時間に起きて朝日を浴びましょう。体内時計と生活リズムのずれをリセットしてホルモンの分泌バランスを整えやすくしてくれます。また食事は3食摂取が理想です。難しくても、体内時計のリセットに重要な朝食だけでもしっかりと摂りましょう。寝る前の過ごし方を意識する
寝る前には、速やかな入眠と熟睡感が得られるようすごし方を意識しましょう。コツは「副交感神経を優位にする」こと。近年はさまざまな影響で交感神経を刺激するすごし方をする人が増えています。- 寝る前ぎりぎりまでスマホやパソコンによる光刺激
- カフェインが含有された飲料の寝る前8時間以内の摂取
- 熱い温度での夜の入浴
体内リズムと睡眠
私たちの体には「体内時計」があります。その体内時計は25時間といわれており、朝日を浴びることで1日の24時間にあわせてリセットされるのです。体内時計が整う規則正しい生活をしていたら、夜になると自然と眠る準備が整い速やかな入眠へ誘います。質の良い睡眠を確保できるでしょう。睡眠不足が続く場合の健康への影響
睡眠不足が続くとイライラしたり、注意力が散漫になり精神的に不安定になりやすくなります。また認知機能が低下し、作業効率にも影響を及ぼし仕事に支障を来すことも。メンタル的な不安定からうつ病を発症する可能性も出てきます。ホルモンのバランスが崩れ、体の調子が整わないことで引き起こされるのが生活習慣病です。少しの睡眠不足でも長く続けば健康への影響は出てしまいます。健康になるためには、睡眠への影響を知り意識的に良眠につなげる行動をとりましょう。
まとめ
睡眠不足が続くとストレスなどの精神的な問題と、生活習慣病を引き起こすリスクが高まります。質の良い睡眠をとり、心身ともに健康な状態で過ごしたいですね。そのために意識して健康につなげる習慣としておすすめなのが
- 規則正しい生活を送り体内時計を整える
- 入眠前の行動を意識し、良眠につながる生活を送る
良質の睡眠が確保できるよう生活習慣を見直してみましょう。また生活面での調整が難しいようなら、サプリメントや健康食品を取り入れることも検討しましょう。
質のいい睡眠をとるだけで、健康的な毎日につながる第一歩となります。今日からひとつでも意識して日常生活に取り入れてみてください。